現役消防士と消防設備士が共同で設立した(一社)予防団の公式ホームページです。
この法人は現代に求められている様々な社会的課題を解決するための活動をしています。
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当記事では “一般社団法人” を設立した現役消防士が、副業について解説していきます。
目次
消防士の副業は禁止されているのか?
副業(兼業)することは可能です。
メディアの情報で「消防士、副業禁止」などのニュースが出たりするため誤解が生じているかもしれませんが、地方公務員である消防士の副業(兼業)は禁止されているわけではないのです。
なぜ、消防士は副業(兼業)禁止と言われるのでしょうか。
その原因は、地方公務員法(以下、「地公法」)第38条にあります。以下のように書かれています。
地公法第38条(営利企業への従事等の制限)
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間 勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除 く。)については、この限りでない。
要するに、
「任命権者の許可を受けなければ、報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。」
ということです。
しかし、これは言い換えれば、
「任命権者(市町村の長が一般的)の許可があれば、副業(兼業)することができる」
ということなのです。
実は、地方公務員の副業(兼業)は禁止ではなく、制限であり、許可制であることがわかります。
よって、消防士が副業(兼業)することも許可を得ることができれば可能ということです。
地公法38条 営利企業への従事等の制限 について【解説】
許可制であることは、先述したとおりですが、さらに細かく条文を見ていきましょう。
地公法第38条に記載されている「営利企業」とは?
「営利」とは、事業活動により得られた利益を、社員や株主など組織の構成員に分配する私企業のことを言います。
地公法第38条では 営利企業=商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業 と明記され、営利企業には、株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、合同会社、そして個人事業主があります。
地公法38条に記載されている
「営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体」とは
「営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体」とは、
「商業、工業、金融業等利潤を得てこれを構成員に配分することを主目的とする企業体をいい、会社法上の会社のほか、法律によって設立される法人等で、主として営利活動を営むもの」
のことを言います。(参照:人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について)
そのため、先ほども記述したとおりで、株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、合同会社、そして個人事業主は「営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体」に該当します。
しかし、一般社団法人や一般社団法人は「営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体」には該当しません。
人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について
一般社団法人・一般財団法人等について
一般社団法人などは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立された非営利法人のことを指します。
よって、地方公務員については、一般社団法人等を設立すること自体は行っても問題ないことになっております。
そして、株式会社と同じように収益事業をしても地公法第38条には抵触しないのです。
その理由は、非営利法人である一般社団法人が行う収益事業は営利が主たる目的ではないからです。
当法人も、社会貢献活動を継続するために収益事業を行っていますが、理事は無報酬で活動していることから、地公法第38条には抵触していません。
しかし、公務員が設立した法人でどんな収益事業をしてもいいかと言われるとそうではありませんので注意してください⚠️
この内容については、他の記事で詳細を解説いたします。
従事してはいけない事業はあるの?
地公法第38条の中では、以下の3つの事業に対して制限が課せられています。
・ 営利企業の役員等になること(株式会社の代表や役員等)
・ 自ら営利企業を営むこと(個人事業主を営むこと)
・ 営利・非営利に関わらず、報酬を得て事業すること(一般社団法人等で報酬を受け取ること)
これらの事業については、任命権者の許可が必要です。
法律としては「いかなる事業であっても、任命権者の許可を得ることができれば、兼業することができる。」ということになります。
「実際、許可もらっている人なんていないでしょ」と思っていませんか?私もそう思っていましたが、すでに地方公務員の兼業(副業)が認められている事例がありますので、紹介いたします。
兼業(副業)が認められている事例や許可基準について
生駒市消防局職員が行っている兼業(副業)の事例
すでに生駒市消防局では、現役消防士が副業(兼業)申請をし、許可を得て活動している内容が生駒市のホームページから確認できます。
みなさん、副業(兼業)することで公務にもフィードバックできたり、民間事業者とコミュニケーション取ることで今までにない選択肢が増えていることが経験談から伺えます。
新しい環境に挑戦することは、自分の可能性を広げることに繋がるので是非挑戦してください!
以下のような事例がありますので、是非生駒市ホームページをご覧ください。
・ NPO法人に参加し、講演会事業を行っている例
・ 中学校のクラブ活動の外部指導者として活動している例
・ 地元の地域クラブのコーチ など
生駒市HP「地域貢献活動(副業)を行う市職員の紹介 」から引用
生駒市の兼業(副業)の許可基準
また、生駒市では職員の地域活動への積極的参加を促進し、公共性のある組織で副業に就きやすくするため、職員が職務外に報酬を得て地域活動に従事する際の基準(運用)を定めておられるので、その審査基準の一部をご紹介いたします。
・ 勤務時間外、週休日及び休日の活動であり、職務の遂行に支障を来たすおそれがない
こと。
・ 地方公務員法第33条に規定する信用失墜行為の発生のおそれがないこと。
・ 活動先の団体等と生駒市との間に特別な利害関係が生じるおそれがなく、かつ特定の
利益に偏することなく、職務の公正の確保を損なうおそれがないこと。
・ 報酬は、地域貢献活動として許容できる範囲であること。
・ 市内外の地域の発展、活性化に寄与する活動であること。
・ 営利を主目的とした活動、宗教的活動、政治的活動、法令に反する活動でないこと。
生駒市HP「地域貢献活動を行う職員の営利企業等の従事制限の運用について」から引用
神戸市の副業(兼業)の許可基準
神戸市においても、地域団体の高齢化などで地域の活力が失われつつある中、地域の担い手不足を解消するため、公務員が地域の活動に参加しやすくするように地域貢献応援制度という制度を開始されました。
活動の審査基準は以下の3つ
・ 社会性(現在解決が求められる社会的課題に取り組む活動か)
・ 公益性(不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与する活動のうち、より社会的な需要が高いと認 められる活動か)
・ 計画性(単発の活動ではなく、継続した活動が見込まれるか)
※ 神戸市においても兼業(副業)許可の実績は多数あり。
公益財団法人 東京市町村自治調査会「公務員の副業・兼業に関する調査研究報告書」から引用
生駒市も神戸市も全国に先駆けて公務員の副業(兼業)を進めていっている地方公共団体です。
副業(兼業)することは金銭を得ることだけではなく、社会経験や仕事に対する考え方など、さまざまなメリットが存在します。
民間事業者と協力して事業をすることの必要性は別の記事にてお伝えていきます。
国が示す副業(兼業)の方向性は?
総務省から、令和2年に「営利企業への従事等にかかる任命権者の許可等に関する調査」が行われましたが、その中で以下ような期待がされています。
近年、多様で柔軟な働き方への需要の高まりや人口減少に伴う人材の希少化等を背景として、民間労働政策において兼業や副業が促進されており、地方公務員も地域社会のコーディネーター等として、公務以外にも活躍することが期待されるようになってきている。
引用元:「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する調査
(勤務条件等に関する附帯調査)」の結果等について(通知)
これは、もう国も公務員の働き方を見直して副業(兼業)OKと言っていると解釈してもいいのではないでしょうか。
国が示す兼業許可の運用についての注意点
上記通知文では、兼業許可は 1 職務の能率の確保、2 職務の公正の確保、3 職員の品質の保持 の3つが保たれるべきとされており、以下で示している「兼業することによっての弊害」を防ぐことが必要とされています。
1 兼業による心身の著しい疲労のため職務の能率に悪影響を与えること
2 兼業先と利害関係があるため職務の公正を確保できないこと
3 報酬が社会通念上相当と認められる程度を超えるため、公務の信用を損ねること
要約すると『副業(兼業)していいけど、公務員ということを忘れてお金儲けに走って本業を疎かにしたり、業者と癒着したりすることはやめてね』ということです。
その他公務員が副業(兼業)するために遵守すること
公務員が副業(兼業)をするにあたり、注意する点は他にもあります。
以下の法令にも注意が必要です。
地公法第30条(服務の根本基準)
地公法第30条では、「職員は、全体の奉仕者であり、公共の利益のために勤務し・・・」と記載されています。
一部の利益を追求する営利企業等に従事することは認められていないため、事業内容には「社会性」「公共性」「継続性」が求められることになります。
公務員が副業(兼業)で事業するには、社会公共の福祉の増進のために行なっている事業であることが必要です。
どんな事業でもしていいわけではないことに注意しましょう。
地公法第33条(信用失墜行為の禁止)
地公法第33条では、「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」と記載されています。
どのような行為が信用失墜行為にあたるかについては、個別の案件ごとに判断されることになります。副業(兼業)に関して問題となる点は、以下の2点が考えられます。
1 事業内容
2 報酬額
先述した内容と一緒ですが、公務員が副業(兼業)で事業するには、社会公共の福祉の増進のために行なっている事業であることが必要です。
どんな事業でもしていいわけではないことに注意しましょう。
地公法第34条(秘密を守る義務)
地公法第34条では、「職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。」とされています。
当たり前のことですが、副業(兼業)先で公務で知り得た情報を活用することは固く禁じられています。
この秘密を守る義務については、退職した後も守る必要がありますので、公務で知り得た情報は絶対に漏洩させないようにしましょう。
地公法第35条(職務に専念する義務)
地公法第35条では、「職員は、・・・その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い、当該地方公共団体のなすべき席を有する職務にのみ従事しなければならない」とされています。
副業(兼業)をしている職員が、職務先で怠慢な態度を示してしまうと本末転倒ですので、副業(兼業)する場合は、誰がどう見ても職務に専念していると思ってもらえるように本業を頑張る必要があります。
市民からのクレームに対応すること
公務員が副業(兼業)をする以上、法令遵守だけではいけません。
なぜなら、公務員は全体の奉仕者であり、市民のために尽くす存在でなければならない、という考えの市民が少なからずおられます。
活動を進めれば進めるほど、市民からの問い合わせは増えてくることになります。
そのため、「市民からこの事業がどのように見えているか」ということを考える必要があります。
冒頭で示した通り、公務員の副業(兼業)は禁止されていて、法令違反だという誤った認識を持っている人が多くいるからです。
市民の中には説明しても理解を得ることができずにクレームに発展する場合もありますが、その場合は貴重な意見として真摯に受け止め、改善に努めましょう。
しかし、地域発展のために行なっている事業であれば、自信を持って活動して支障ありません。
今はまだ公務員の働き方に対して理解を得ることができない場合もありますが、副業(兼業)をする人たちが増えてくれば、必ず副業(兼業)が当たり前の時代になはずです。
みんなで活動していきましょう。
結論(まとめ)
地方公務員である消防士として副業(兼業)することは可能です!
ただし、現在認められているのは社会性、公益性、継続性が認められた事業であることが必要で報酬も社会通念上、妥当な金額である必要があります。
まだ世間一般的には「公務員は副業(兼業)してはいけない」と認知されている現状ですが、兼業する人たちが増えて社会で活躍することで、公務員の副業(兼業)が当たり前の社会になっていくことを期待しています!
地方公務員の成り手が減少している現在において、他業種との人材獲得競争に勝つためには、副業(兼業)や週休3日制などが認められた新たな公務員の働き方が必要不可欠ではないでしょうか。
消防士という職業が子どもたちのなりたい職業ランキング1位となるように、本法人はガンガン活動していきますので、よろしくお願いいたします!
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